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エボラ熱、日本の防御態勢は大丈夫か


http://toyokeizai.net/articles/-/51533

エボラ熱、日本の防御態勢は大丈夫か
空港で検疫しても入国後に発症する可能性
藤尾 明彦,渡辺 拓未
2014年10月27日

「エボラ熱、日本の防御態勢は大丈夫か 空港で検疫しても入国後に発症する可能性
汗や血液などの体液に触れると感染の可能性が高まるため、防護服が不可欠

「嘔吐、下痢などを繰り返し、最期は体の震えが止まらず、亡くなっていく」──。国境なき医師団の看護師としてシエラレオネに派遣された大滝潤子氏は、「エボラ出血熱」(エボラウイルス病)の恐ろしさを目の当たりにした。

WHO(世界保健機関)によると、10月17日時点での患者数は9000人を突破。感染が広がっている西アフリカ地域に加え、欧米でも発症者が出るなど、先進国に飛び火している。

11月4日に中間選挙を控えた米国では、野党・共和党の候補者から、西アフリカ諸国から米国への渡航禁止を求めるなど極端な意見が飛び出した。他方、与党・民主党は医療費削減を求めてきた共和党を批判するなど、エボラ対策が政争の具にすらなっている。

日本で発症者が出る可能性はあるのか。厚生労働省の中嶋建介・感染症情報管理室長は「低いがゼロではない。出る前提で対策を立てている」と語る。日本人にとっても、対岸の火事とはいえない状況になってきた。
患者の体液に接触すると感染の可能性

エボラウイルスは5種類が確認されており、現在、西アフリカで蔓延しているタイプの致死率は約50%。空気感染はしないが、患者の血液や汗などの体液に濃厚に接触すると、人から人へと感染する可能性が高まる。

未承認だが治療薬として期待される新薬は二つある。一つは米マップ・バイオファーマシューティカルが開発中の「ZMapp」。もう一つは富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業が開発した「アビガン」(一般名「ファビピラビル」)だ。

ZMappは特例で投与され、投与後に回復した例もあったが、死亡した人もいる。足元ではほとんど在庫がなく、効果と安全性を確認できない状況にある。




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エボラ熱、日本の防御態勢は大丈夫か
空港で検疫しても入国後に発症する可能性
藤尾 明彦,渡辺 拓未
2014年10月27日

一方のアビガンは、もともと今年3月に承認されたインフルエンザ治療薬で、米国でも申請中である。アビガンを服用したフランス人女性のエボラ患者が治癒し、10月4日に退院したことで、エボラ出血熱にも効果があるのではないかと注目されている。

すでに量産されており、フランス政府とギニア政府が11月からギニアで60人を対象に、臨床試験を行う予定だ。ほかの国や機関も、富山化学工業にアビガン提供を要請している。

しかし、現時点では有効性について、十分な確認は取れていない。ワクチン開発もカナダなどで進んでいるが、「最終的に承認されるのはいつになるかわからない」(西條政幸・国立感染症研究所ウイルス第一部部長)。

結局、治療法が確立されていないため、空港での検疫体制を整えるといった予防に頼らざるをえないのが現状だ。
感染から発症まで最長潜伏期間は21日間

WHOが緊急事態を宣言したのが8月8日。その後、患者が集中しているギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国に滞在して日本へ入国したのは、200人超に上る。

その一人、国境なき医師団の大滝氏は、ベルギーのブリュッセルを経由して、9月10日に日本に入国。西アフリカでエボラ患者に接触した場合は自己申告するようにアナウンスがあったという。

感染を確かめようにも、発熱などの発症がないかぎり、その場で検査しても、陽性反応は出ない。感染から発症までの潜伏期間は2~21日で、検疫を通過した後に発症する可能性がある。大滝氏は入国日から21日間は、朝と晩の2度体温を測って、報告するように指示された。




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エボラ熱、日本の防御態勢は大丈夫か
空港で検疫しても入国後に発症する可能性
藤尾 明彦,渡辺 拓未
2014年10月27日

「エボラ熱、日本の防御態勢は大丈夫か 空港で検疫しても入国後に発症する可能性 |
エボラウイルスは5種類。感染した場合の致死率は20~90%

万が一、入国後に発熱など感染が疑われる症状が出たら、防護服や隔離病棟を備えた全国45の指定医療機関が患者を受け入れる。患者の血液は東京の国立感染症研究所に送られ、そこで陰性か陽性か確定診断が行われる。

米国では、リベリアから入国した後、エボラ出血熱を発症したトーマス・エリック・ダンカン氏が最初に不調を訴えて病院で受診した際、一時帰宅を許された。ダンカン氏はその後死亡。治療に当たった2人の看護師も感染した。

二次感染をいかに防ぐかは喫緊の課題だ。厚労省の中嶋氏は、「病院は平時から院内感染を防ぐ訓練をする必要がある」と、指導委員会を立ち上げ研修を急ぐ。大滝氏は体験を基に「防護服の脱着は10分弱かかる。肌が露出していないか、つねに医療スタッフ同士でチェックし合う必要がある」と指摘する。

米国疾病対策センター(CDC)は、来年1月下旬までに感染者数が最大140万人に達する可能性があると試算するが、予測数値は専門家によってバラツキがある。
ナイジェリアでは終息宣言

ナイジェリアでは20人の感染者が出たが、新規感染のない期間が42日間に達し、10月20日、WHOは感染拡大の終息を宣言した。電話の通話記録などから感染者と接触があった疑いのある人を特定。21日間の経過観察を行い、症状が出た人を専門治療施設に隔離したことが、功を奏したという。米国でも感染者との接触があった人を追跡して経過観察を実施。感染者は3人にとどまっており、対応策の面から参考になる。

日本ではまだ発症者は確認されていないが、最悪の事態も想定した備えが必要だ。これからも感染症リスクから逃れることはできない。

(「週刊東洋経済2014年11月1日号<10月27日発売>」)掲載の「核心レポート01」を転載)



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