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2州が独自策、不満の表れ エボラ熱対策、米政府は後手
ワシントン=小林哲、ニューヨーク=中井大助
2014年10月25日23時59分
写真・図版米ホワイトハウスの執務室で24日、エボラ出血熱に感染して回復した看護師、ニーナ・ファムさんと話すオバマ米大統領=AFP時事
米国のニューヨーク、ニュージャージーの両州が、エボラ出血熱の「水際対策」で独自の施策を決めた。9月下旬に国内初のエボラ患者が確認されて以降、米政府の対応は、後手に回っている印象が否めない。州政府の独自対策は、連邦政府への不信感の表れといえ、米国内の混乱が浮き彫りになっている。
特集:エボラ出血熱
「米疾病対策センター(CDC)の基準にはもう頼らない」
ニュージャージー州のクリスティー知事は24日、こう述べた。州側が不満を強めているのは、米政府の不手際が続いているからだ。
看護師2人が二次感染したテキサス州の病院では、CDCの定めた基準に沿う防護服を着用しながら感染が防げなかった。感染経路は今も特定されていないが、CDCは、全身を完全に覆う従来より手厚い防護服の着用を求めるよう基準を見直した。西アフリカの感染地域の医療関係者の間では、すでに標準的な装備で、野党共和党の議員などから「米国の医療従事者の安全が、(西アフリカよりも)ないがしろにされていたのは恐ろしい事態だ」と批判の声が上がった。
空港などの入国時の検疫も導入が遅れた。そもそも米国では、西アフリカの感染地域からの渡航者を対象にした特別な検疫は行っていなかった。万一、エボラ患者が出ても、米国の医療態勢があれば感染拡大を封じ込められると考えていたからだ。
だが、テキサス州でリベリア人男性が入国後に発症し、病院の手違いから救急隊員や同居人ら50人近くに二次感染の恐れが広がった。国民の不安が一気に高まり、CDCは、急きょ大都市5空港での検疫の強化を打ち出した。
CDCによると、ギニア、リベリア、シエラレオネから米国への渡航者は1日に約150人。感染者を一人も国内に入れないようにするには、入国を一律に拒否する渡航禁止令などを検討せざるをえない。だが、オバマ政権は「かえって米国のリスクを増やす」(アーネスト大統領報道官)とみて導入には慎重だ。人や物資の往来を封じると現地がますます混乱して感染拡大に歯止めがかからなくなり、うそをついて不正に入国しようとする渡航者も増えるとみているためだ。
ワシントン・ポストなどの世論調査では、渡航規制を支持する米国人は7割近くに達する。追加対策を迫られた政府は、22日からギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国からの入国窓口を5空港に絞った。さらに、27日からは対象者一人ひとりに体温計を配るなどして健康状態の報告を義務づけ、発症した場合に速やかに適切な措置をとれるようにする。
ギニアでエボラ患者の医療支援活動に参加したニューヨークの医師が発症したことを受け、ニューヨーク、ニュージャージーの両州は今回、「強制隔離」に踏み切ることを打ち出した。米政府は、同様の対策を検討し始めた模様だ。エボラ患者と接触した入国者に、最大21日間の隔離を義務づける案について「専門家たちが議論している」(アーネスト大統領報道官)などと認めた。(ワシントン=小林哲、ニューヨーク=中井大助)
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