ページ

アビガン、承認用量でエボラに効く可能性あり

http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20140904/414122/?rt=nocnt

http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20140904/414122/?rt=nocnt

アビガン、承認用量でエボラに効く可能性あり

富山大学医学部ウイルス学教授・白木公康氏に聞く
日経メディカル オンライン

2014年9月4日


 西アフリカで流行が続くエボラ出血熱に対する有効性が確認され、注目を集めているファビピラビル(商品名アビガン、関連記事:富士フイルム「アビガンは2万人分在庫あり」)。ファビピラビルはインフルエンザに対する臨床試験は終了しており、ヒトでの薬物動態や安全性などはある程度データが公表されている。薬剤の開発に携わった富山大学医学部ウイルス学教授の白木公康氏に、エボラ出血熱に対するファビピラビルの可能性について聞いた。


――これまでにエボラウイルスに対するファビピラビルの有効性を示した、主な動物実験の概要を教えてください。

 現在までに、2つのグループからエボラウイルスを感染させたマウスに対するファビピラビルの有効性が報告されています1,2)。肝機能障害が認められ8匹中2匹が死亡する感染条件下のマウスに対し30mg/kg/dayを投与したところ、マウスの死亡率の改善効果は不明ですが、肝機能障害は完全に抑制されました1)。さらに300mg/kg/dayの投与で、10匹全てが死亡する致死性感染マウスが全例生存したと報告されました1,2)。

――エボラウイルスの場合、インフルエンザウイルスの時よりも高用量の投与が必要だと言われていますが。

 エボラウイルス増殖を阻止する濃度IC50については、インフルエンザの細胞実験で使われたプラーク減少法ではなくYield法やTCID50法が用いられ、Yield法でのIC50は10μg/mL1)、TCID50~TCID100は、31~63μg/mL2)と報告されています。これはインフルエンザウイルスより高い濃度が必要であることを意味します。したがって、抗エボラウイルス活性を示す有効濃度を達成するためには、インフルエンザより高用量の投与が必要だと考えられます。ただし、インフルエンザウイルスは主に上気道に存在し、一方エボラウイルスは主に血液中に存在するため、単純な比較はできないと思います。

――現在インフルエンザに対するファビピラビルの投与量は「1日目は1回1600mg、2~5日目は1回600mgを1日2回経口投与」となっています。

 審査報告書によると、国内の臨床試験ではヒトでの血中濃度が10μg/mLは最低確保されていましたが3)、米国の試験結果に基づき、20μg/mLが確保できる用法・用量が採用されました。したがって現在承認されている用法・用量では20~60μg/mLの血中濃度が維持されると期待できます。



しらき きみやす氏○1977年阪大医学部卒。阪大微生物病研究所、ペンシルバニア州立大を経て、90年富山医科薬科大ウイルス学教室教授、2006年より現職。富山大医学部副学部長、同医学科長も務める。




――現在のデータから、エボラ出血熱に対するヒトへの投与量は予想できますか。

 理想的には、ヒトに近い霊長類でのエボラ出血熱に対する試験があると、ヒトでの効果の推測に役立つと思われます。しかし、まだ報告されていませんので、確定的なことは言えません。その上で、ヒトから離れたマウスでの実験結果とインフルエンザの臨床試験から次のように推測してみました。

 前述の通り、ファビピラビル30mg(15mgx2)/kg/dayの投与で、感染マウスの肝機能障害が抑制できています1)。一方インフルエンザの際に行われたマウスの基礎実験では、マウスに20mg/kgを単回投与したところ、最高血漿中濃度が9.11μg/mLだったと報告されました3)。したがって、血中濃度が9.11μg/mL前後またはそれ以上の濃度で、エボラ感染マウスで認められた肝機能障害抑制効果が期待できるようです。

 残念ながら、致死性感染マウス全例が生存した300mg/kg/day投与実験におけるマウスの血中濃度は報告されていません。しかし、先ほど説明したように、承認されている用法・用量での血中濃度は20~60μg/mLと予想できます。その血中濃度は、肝機能障害抑制効果が期待できる9.11μg/mLを超えていることから、マウスからの推測という乱暴な方法ですが、現在の用法・用量でもエボラウイルス感染治療の有効域に入っている可能性はあります。

 ただし高用量の方がより有効性が期待できることは確実です。また、マウスの致死性感染実験では、投与時期が遅れると無効であると示されているように、投与時期が遅れないことも重要です。

――エボラ出血熱に対する効果を議論する際に注意すべき点はありますか。

 まずは霊長類での有効性試験を行い、その結果に基づきヒトでの有効濃度を維持できる適切な投与量の設定と安全性の確認等が必要です。致死性感染症に対する使用という点がありますが、小児や妊婦に対しては、特別な注意が必要だと思われます。

 ファビピラビルは、インフルエンザの基礎実験で確認されてきたように、薬剤耐性ウイルスができにくいという特徴があります。RNA合成酵素に校正機能がなく変異を起こしやすいRNAウイルスでは、変異による薬剤耐性ウイルスの出現が懸念されますが、ファビピラビルはRNA合成の最重要点を阻害するため、変異が生じるとRNA合成機能も失うため、耐性ができにくいと考えられます。

 エボラウイルスにおいてもファビピラビル耐性ウイルスの出現が懸念されるものの、耐性ウイルスの出現の可能性が低いというインフルエンザで見られたファビピラビルの優れた特性が、エボラウイルス感染の治療にも期待できると考えています。

 もちろん投与量は多くして、免疫が立ち上がり延命できるまで、ウイルスの増殖を抑えることが重要でしょう。希望的に考えれば、肝機能障害の阻止やエボラウイルスの排除など、動物で見られた効果がヒトで見られる可能性は高いと思います。今後の霊長類などでの有効性試験の研究成果が待たれます。

<参考文献>
1)Oestereich L,et al.Antiviral Res.2014;105:17-21.
2)Smither SJ,et al.Antiviral Res.2014;104:153-5.
3)審査結果報告書(ファビピラビル)

http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20140904/414122/?rt=nocnt

ブログ アーカイブ

「当サイトを振り返る」

このように記事を並べても、当座は兎も角、後で見ても役に立たない。何らかの体系化が欠かせない。構造は単純で構わない。※

アクセスの多い投稿:週間

アクセスの多い投稿:月間

アクセスの多い投稿:年間