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エボラ出血熱の恐怖と今後の行方


エボラ出血熱の恐怖と今後の行方
 


|濱口和久「本気の安保論」 2014年9月30日07:07

 エボラ出血熱が西アフリカで猛威を振るっている。日本で生活していると、エボラ出血熱の恐ろしさがあまり実感できないなか、現地を訪れたジャーナリストの丸谷元人氏を私がキャスターを務める日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」に招き、話をうかがった。以下はそのときの資料や番組のなかで丸谷氏の報告をまとめたものだ。
(1)拡大するエボラ出血熱

img 世界保健機関(WHO)は9月23日時点で、エボラ出血熱での死者が、疑いも含めて3,091人、感染者が6,574人にのぼると発表した。WHOは、このまま対策を講じなければ、11月上旬にも感染者が2万人を突破すると試算。アメリカ疾病対策センター(CDC)も、来年1月には140万人に達する恐れがあると警告している。致死率は、50%から90%もあり、西アフリアの国々に拡大している。 国別の累計死者数は、リベリアが1,830人、ギニアが648人、シエラレオネが605人、ナイジェリアが8人などだ。
(2)エボラ出血熱とは

 エボラ出血熱は、1976年にスーダンで初めて発見された。その後、アフリカを中心に現在まで30回近い発生が確認されている。感染力の強さと致死率の高さから「悪魔のウイルス」とまで呼ばれ、研究機関における危険度は最高の「レベル4」に分類されている。
人体に感染するエボラ・ウィルスには、「スーダン株」と「ザイール株」という2種類が存在するが、現在、西アフリカで多くの人々の命を奪っているウイルスは、極めて致死性の高い「ザイール株」である。
 一方、コンゴ民主共和国でも発生しているが、こちらは「スーダン株」と、「ザイール株」の混合の両方がある。

 また、感染経路はオオコウモリとされるが、詳しいことはわかっていない。「ザイール株」の空気感染はないとされているが、ブタからサル、またサル同士の非接触感染が確認されている(米陸軍感染症医学研究所(USAMRIID、フォート・デトリック)の研究など)。「ザイール株」は、人間から人間へと感染する過程で、300回以上の突然変異を繰り返しているとみられている。アメリカの専門家のなかには、「空気感染に関しては、まだまだ議論の余地があり、念のため注意しておいたほうがよいだろう」との発言がある。
(3)細菌兵器として利用?

 エボラ菌は生物兵器として注目され、ロシアは1990年末までにエボラ菌を細菌兵器として開発済みだと言われている。アメリカも炭疽菌の兵器化を1990年代後半から研究を進めていた、ということがニューヨークタイムズ紙の記事で暴露されている。

 テロリストによって使用される可能性もある。ロシアの研究者は、それは十分可能であるとしており、また93年、オウム真理教の麻原彰晃死刑囚が、76年に初めて感染が確認されたザイールに16人の医師と看護師を連れて行ったことが確認されている。アメリカCDCの論文では、彼らはエボラ菌を研究し、可能であれば日本に持ち帰る計画を立てていた、と指摘している。オウム真理教の犯行である地下鉄サリン事件を考えれば、もし仮に彼らが日本にエボラ菌を持ち帰っていたら、新たな細菌兵器によるテロ事件が起きていた可能性もある。
(4)米国の取り組み

 アメリカ国防総省は、数年前からエボラ対策費として、国内外の製薬会社に数百億円単位の予算を投入し、特効薬を製造している。以下の会社は、直接的に、または関連会社が国防総省の資金を得て新薬を開発している。

 テクミラ・ファーマシューティカルズ社(カナダ)に対し、エボラ治療薬開発の資金として1億4,000万ドルを拠出、これで同社は「TKMエボラ」を開発した。マップ・バイオファーマシューティカル社に対し、CIAと国防総省が資金提供し、未承認薬「ZMapp」を開発。富士フイルムホールディングスの子会社である富山化学工業が発明した抗インフルエンザ薬「ファビピラビル」。提携先のメディベクター社(米)が国防総省から資金提供を受けている。

 エボラ出血熱の患者はこれまで少なく、また感染がアフリカに限られていたので、これまで製薬会社としては、莫大な時間とコストをかけて特効薬を作ることができなかった。だが、安全保障上の要請でアメリカ国防総省が資金を出したことにより、今回の新薬開発につながった。しかし、効果はまだ限定的であり、急激に増え続ける感染に歯止めがかからない状況が続いている。
(5)日本人も意識を変えよ

 日本ではデング熱の発生でも大騒ぎになった。もし日本国内でエボラ出血熱の患者が確認されたら、パニック状態に陥る可能性もある。現時点ではエボラ出血熱の感染は、西アフリカの国々に限定されているが、日本国内からエボラ出血熱の患者が今後も出ないという保障はどこにもない。日本人は今、目に見えない敵と戦う覚悟を持つことが求められているのだ。

http://www.data-max.co.jp/politics_and_society/2014/09/17868/0930_hmg_1/

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