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2014年09月26日更新 エボラ対応に関するロードマップ (更新5)

2014年09月26日更新 エボラ対応に関するロードマップ (更新5)

 9月24日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますと、西アフリカにおけるエボラ出血熱の発生状況は以下のとおりです。
概観
 2014年9月21日の時点で、現在の西アフリカのエボラウイルス疾患(EVD)の流行で、可能性の高い症例、確定症例、疑い症例(添付1を参照のこと))の総数は、6,263症例、死亡例2,917症 例となりました。影響を受けている国は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネです。下に示す図1は、2013年12月30日(疫学的 な第1週)に始まり2014年9月21日(同第38週:9月15日から9月21日)に至るまでの間に、各週に報告された国による確定症例と可能性の高い症 例の総数を示しており、前2週間と比較し新規症例の報告数が減少していることが示されています。しかし、後述するような理由から、これが実態を正確に反映 しているとは考えにくいと思われます。西アフリカでのEVDの流行は依然として増加しています。
 図1 流行状況(確定症例および可能性の高い症例のみを統合)ヒストグラムfig1.jpg
※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
概要
 これはエボラ対応ロードマップ(リンク)に関する定期状況報告の第5報です。報告書には、保健省が報告した公式情報に基づいた疫学的な状況の要約と、利用可能な場合には中心となるロードマップの指標と比較した対応の評価が含まれています。
 この報告に含まれるデータは利用が可能な最も質の高い情報に基づいています。疫学的な状況と対応の履行の両方について情報の利便性と正確性を向上させるためにかなりの努力が続けられています。
 ロードマップの体系に沿って、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。それは、 (1) 広範囲に及ぶ深刻な伝播が生じている国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、(2) 初期の症例が生じた国、あるいは局所的な伝播が生じている国(ナイジェリア、セネガル)、(3) 活発な伝播力をもつ地域に隣接する国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニアビサウ、マリ、セネガル)です。西アフリカのエボラ流行と関連の ない、別個のエボラウイルス疾患が発生しているコンゴ民主共和国の状況の概観についても示されています(添付2を参照のこと)。
1.広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国
 シエラレオネでは流行の拡大傾向が続いており、またリベリアにおいても同様の傾向にある可能性が非常に高いと考えられます。しかし、ギニアでの状況は、 現在も非常に懸念があるものの、安定したように思われます。過去5週間で、新規確定症例が75例から100例それぞれの週で報告されました。
表1ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例数(2014年9月21日現在)140926_WHO_ebola_roadmap_table1.jpg※データは、保健省によって報告された公式情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
ギニア
 ギニアでの状況は安定化をみせており、過去5週間のそれぞれの週で、82~102例の新規確定症例および可能性の高い症例が報告されました。リベリアや シエラレオネの首都と異なり、ギニアの首都であるコナクリ(Conakry)の伝播状態は、依然として安定しており中等度の流行状況で、それぞれの週の新 規症例の報告は3~15例でした。流行の発端となったゲケドゥ(Gueckedou)では、過去30週のそれぞれの週で、10~20症例が報告されまし た。ゲケドゥと隣接するマセンタ(Macenta)からは、依然として過去5週間に多くの新規症例(37~70症例)が報告されています。
 図2:ギニアとコナクリから報告された週別のEVD症例数fig2.jpg
※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
リベリア
 図1に示された新規症例数の減少は、主としてリベリアから報告された新規確定症例数が急激に減少したことに起因しています。注目すべき事に、過去数週に 症例数の急激な増加が報告されていた首都モンロビア(Monrovia)からの新規確定症例の報告はありませんでした。これらのデータは、リベリアから報 告を寄せてきている人たちによって収集された信頼に足る報告とは異なっており、彼らはリベリアでの状況が悪化しており、特にモンロビアで状況が悪化してい ると指摘しています。これに加え、リベリアからこの1週に報告された新規の疑い症例数(および疑い症例での死亡例)が大幅に増加しています。これらの症例 は図1には含まれていませんが、表1には示されています。
 これら疑い症例のかなりの部分が、正真正銘のEVD症例である可能性は高いと考えられ、報告上の確定症例数の減少は、臨床的なサーベイランスデータと検 査結果を照合する作業の遅れを反映しています。この問題に対応する努力が現在払われており、そのうち数値は上方修正されることになるでしょう。現時点で は、可能性の高い症例、疑い症例数を確定症例数と併せた総数が、リベリアでの症例数をより正確に反映している可能性があります。数値の上方修正、特に確定 症例数の上方修正が、時期がくればなされる可能性が高いでしょう。リベリアの他の地域では、グランドバッサ(Grand Bassa)およびニンバ(Nimba)で新規症例の報告数の増加が続いています。ギニアのゲケドゥに隣接するロファ(Lofa)での新規症例数は前の数 週間では減少を続けていましたが、この減少傾向は現在止まっており、前週と比較して僅かに症例数が増加しました。
 図3:リベリアとモンロビアから報告されたEVD症例数fig3.jpg
※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
シエラレオネ
 国全体で、シエラレオネの状況は依然として悪化傾向を示し、過去5週間のいずれの週でも報告された新規確定症例数の増加がみられています。この増加は主 として、首都フリータウンで報告された新規症例数の急激な増加によってもたらされました。フリータウンに隣接した地区であるポート・ロコ(Port Loko )、ボンバリ(Bombali)、モヤンバ(Moyamba)でも過去4~5週の間に症例数の増加が報告されました。依然症例数が安定化しているか徐々に 減少していた、カイラフン(Kailahun)とケネマ(Kenema)で報告された新規症例数は、前週で下降しました。しかし、この下降が本当のもので あるか確認するためには、さらなる調査が必要とされるでしょう。3日間に渡って行われた戸別訪問によるエボラ感知キャンペーン(9月21日に終了しまし た。)によって検出された症例および死亡例は、今のところ公的データの中には含まれていません。
 図4 シエラレオネおよび首都フリータウンから報告されたEVD症例数fig4.jpg
※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
医療従事者
 シエラレオネにおける流行経過全体を通してのEVD症例に対して、最近行った遡及調査では、感染した医療従者の数は以前報告されたものよりも高いことが示されました。
 表2 2014年9月21日時点での医療従事者のEVD感染数140926_WHO_ebola_roadmap_table2.jpg
※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
 この調査の結果が公的な国のデータに組み入れられた際に、シエラレオネで医療従事者に記録された症例数および死亡数は急激に増加し、WHOにより9月 18日に報告された74の症例および31の死亡例から、同じくWHOが9月22日に報告した96の症例および61の死亡例となりました。この報告書ではシ エラレオネで医療従事者に113の症例および81の死亡例を報告しており、さらに急激な増加がみられています(表2参照)。この急激な増加は、やはり公的 な国のデータに遡及調査の結果が組み入れられたことを反映しています。この流行の全経過を通して生じた医療従事者の感染や死亡が、さらに存在しうることを 強調する必要性があります。医療従事者のEVDの症例はいかなる場合も重大な懸念事項です。しかし、医療従事者の感染の発生率が最近増加していることを示 す証拠は現在のところありません。
地理的分布
 下の図5は広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国における症例の位置を示しています。現時点までのそれぞれの地域での累積症例数がグレー色の円で、9 月21日までの過去21日以内に発生した症例数が赤の円で示されています。
 以前に症例が確認された9つの地区(ギニアの7地区、シエラレオネの1地区、リベリアの1地区)では9月21日以前の過去21日間に症例は報告されてい ません。ギニアでは以前に感染のみられていなかった2地域で、9月14日以前の過去7日間に最初の症例が報告されました。ギニアでは、新たに感染のみられ たキンディア(Kindia)地域で1例の確定症例が報告されました。リベリアは、コートジボワールとの国境に近い、以前感染のみられていなかった地域の グランドクル(Grand Kru)で、最初の症例がみられたという予備的な報告が複数あります。これについては今後の更新情報で明らかになるでしょう。
図5:ギニア、リベリア、シエラレオネにおける新規症例数および総数の地理的分布fig5.jpg
※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。この地図に示された境界線や名前、使用された記号については、いかなる意味においても WHOの見解を示すものではありません。これはすべての国、領域、都市、地域の法的立場、またそれぞれの当局の法的立場を考慮してのことです。地図上の点 線や破線は、現在完全な合意が得られていない可能性がある部分のおよその境界を示しています。
広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国々での対応
 広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国々で、エボラ対応の補足的な活動が地理的範囲全体に行き渡ることを目指して、WHOは以下の5つの特定の領域で対応の作業を監視しています(図6参照のこと)。各領域における最新の展開状況について以下に詳述します。
①症例の管理:エボラ治療センター、紹介、感染予防と制御
 リベリアのモンロビアで、先週新しいエボラ治療病棟(ETU)であるIsland Clinicが開設され、一方、ボン(Bong)郡では広くテントを張ったETUが設営されました(図6参照)。現場への医療従事者派遣作業を拡大する努 力、そしてさらなるETU開設を加速化させる努力が続けられており、米国の関与により新規施設を設営するために軍を派遣することによって、これが増強され る予定です。しかし、リベリアおよびシエラレオネでは、病床数と需要数に大きな格差が依然としてみられています(表3)。
 表3 感染の影響を受けた各国でのEVD症例に対する病床数(2014年9月21日時点)140926_WHO_ebola_roadmap_table3.jpg
 感染防御及び予防(IPC)を改善させる努力については、引き続き活動を要する主要な領域です。WHOの感染防御に関する無料の遠隔通信による講座に は、大多数のアフリカ諸国保健省からの参加者を含む、73,000人以上がオンラインで参加しました。これに加えて、WHOおよびパートナーが、地域共同 体レベルにおいて、またエボラ流行地域から外に出る際のスクリーニングに対して出発地点において、支援を行うことになるECUで実行すべきIPCの手順に ついてのガイダンスが、現在作成されました。
 流行の影響を受けている国々の医療施設に対して、安全評価とIPCの監視を行うための一連の手技(tool)が開発されています。このような手技とエボラ対応を監視するための幅広い取り組みとを連携させる方法も開発されています。
②症例の診断
 ギニアでは、検査室の能力は現在の需要に十分見合っています(図6)。リベリアおよびシエラレオネでは新規症例の増加に対応するために、検査室の能力が強化されています。
 リベリアでは米国海軍による検査室1つおよびさらに2つの移動式検査ユニットの派遣により、国全体で活動できる3つの移動検査室による支援がさらに提供される予定で、9月末までに稼働する予定です。
 シエラレオネではフリータウンの移動検査室が、検査能力を1日当たり100例まで増加させている途中です。ボンバリ(Bombali)での検査の需要の増加に対して、さらに検査に対する支援を傾注することで対応がなされる予定です。
 図6 ギニア、リベリア、シエラレオネに対する対策の監視体制fig6.jpg
※ここに示されたデータは、保健省やWHOの報告、OCH、コナクリおよびジュネーブのUNICEF、非政府機関による状況報告などを含む、種々の二次的 な情報源から収集されたものです。協力機関および医療チームの代表部との1対1の情報交換の際に得られた情報も含まれています。
③サーベイランス
 接触者への追跡調査が実施されているほとんどの場所で、監視プログラムによると90%以上の地域が網羅されていると報告されています。
④安全かつ尊厳が保たれた埋葬
 WHOの支援を受けて、各国保健省および各国赤十字の協力の下、すべての感染の影響を受けた地区で埋葬チームが現存していると報告されています。
⑤社会的動員
 ギニアではUNICEFとパートナーが、県の下位にあたる地域レベルで小規模の計画を発展させることによって、社会的動員の強化を続けています。WHO および世界食糧計画(WEP)と協同する形で、社会的動員活動が、広範囲に対する食糧配布計画の一環として組み入れられつつあります。
 ゲケドゥ、マセンタ、ンゼレコレ(N’zerekore)、Yomouでは、EVDの生存者による協会が設立されています。この協会は、孤児や未亡人など、感染を受けやすいその他の集団に対する支援やケアを拡大する予定です。
 いくつかの共同体では、依然として社会的動員の努力に対して抵抗がみられています。例えばギニアのファッサンコニ(Fassankoni)からの報告に よると、地域共同体がバリケードを築いて対応活動チームに対して検問を行っているとのことです。UNICEFは地域当局や警察と協力して、現場でのチーム の安全を改善させるために作業しています。加えて、多くの青年層が伝統的な指導者や政府当局に対して抵抗していることを考慮して、社会的動員チームは引き 続き拡大した支援努力を続け、抵抗に対応するために、青年層をチームに参加させるように活動しています。
 リベリアでは教師11,000人に対する訓練が、社会的動員の地域のカバー率を上げ、重要な予防行為を推進するために行われています。
 シエラレオネでは、緊急対策本部による報告で、戸別訪問キャンペーンが成功裡に実行され、目標とされた国全体の150万世帯の75%に対して、動員チー ムの人員が訪問したとされました。WFPはシエラレオネ国内のすべての治療および隔離センターに対して、食糧と温かい食事を提供しました。また、フリータ ウン周辺の22のスラム街に居住している2万の抵抗力が低いと考えられる世帯およびすべての隔離されている世帯に対して、同様に食糧が配給されました。戸 別訪問キャンペーンの期間に、WFPはシエラレオネ国内を網羅する形で13の移動可能な対応チームを予備的に配置し、最大5,000の予めパッケージ化し た家族用の配給用食糧が隔離された世帯に配給できるように準備しました。
 地域共同体のラジオ局は、8つの現地語を用いて、このキャンペーンの間中、キャンペーンを認知させるためのメッセージを広める援助を行いました。伝播の活動性が高い地点とされている地域共同体では、社会的動員が続けられることになっています。
2. 初期の症例が生じた国、あるいは局所的な伝播が生じている国
 2か国(ナイジェリアとセネガル)では広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国から入国してきた症例が報告されています。ナイジェリアでは20の症 例と8例の死亡例が報告されました。セネガルではこれまでに1例が発生しましたが、死亡例やエボラによると考えられるさらなる疑い症例は、現在のところみ られていません(表4参照)
 接触者の追跡調査と経過観察が現在行われています。ナイジェリアでは810例の接触者(874例の全接触者中)が、現時点で21日間の経過観察を終えま した(ラゴスで348人、ポート・ハーコートで432人)。ラゴスでの最後の確定症例は9月5日に報告されました。ポート・ハーコートでの最後の確定症例 は9月1日に報告されました。ラゴスで現在も経過観察を受けている3名の接触者については、全員が9月21日に観察を受けました。ポート・ハーコートで現 在も経過観察を受けている61名の接触者(523例の全接触者中)については、58名95%が9月21日に観察を受けました。
 セネガルでは、すべての接触者が現時点で21日間の経過観察を終え、さらなるEVD症例は報告されていません。ある国でエボラ流行が終息したと考えるた めには、21日間の潜伏期間の2倍に当たる42日間の観察期間中に追加の症例がみられないという条件が満たされなければなりません。
 表4 ナイジェリア、セネガルにおけるEVD症例および死亡例(2014年9月21日現在)140926_WHO_ebola_roadmap_table4.jpg
※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
3. エボラへの暴露を迅速に検出し対応するための各国の準備状況
 事務局長が国際保健規則(IHR 2005)に基づき招集した、2014年の西アフリカのエボラ流行に関する2回目の緊急委員会が、2014年9月16日から2014年9月21日にかけ て、緊急委員会のメンバーとアドバイザーの参加の下に、電子通信によって開催されました。この委員会では、すべての国家が対応準備を強化し、準備計画を検 証し、シミュレーションおよび十分に人員の訓練を行うことを通じて国の準備状況をチェックすべきであることが強調されました。

添付1.
 エボラ症例は疑い症例、可能性の高い症例、確定症例のうちのどの基準に合致するかで分類される。
表5:エボラ症例の分類に使われる基準140918_WHO_Ebola_table5_criteria.jpg
添付2.
コンゴ民主共和国でのエボラ流行
 2014年9月21日現在、コンゴ民主共和国(DRC)で68例のエボラウイルス疾患(EVD)症例(28例の確定症例、26例の可能性の高い症例、 14例の疑い症例)が報告され、その中には8例の医療従事者の症例が含まれています。総数で41例の死亡例が報告されており、医療従事者の8例の死亡例が 含まれています。
 432名の接触者が現時点で21日間の観察を終えました。現在監視を受けている488例の接触者の中で、468例96%が9月21日に観察されました。 これがデータ報告のあった最終日になります。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネでの流行との関連はありません。

出典

WHO: Ebola Response Roadmap Situation Report, 24 September 2014
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/134771/1/roadmapsitrep_24Sept2014_eng.pdf?ua=1

http://www.forth.go.jp/topics/2014/09261350.html

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