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「ドイツ政府の直接援助なしには、エボラとの戦いに敗北する」 呑気な先進国とアフリカの悲痛な現状


「ドイツ政府の直接援助なしには、エボラとの戦いに敗北する」 呑気な先進国とアフリカの悲痛な現状

2014年09月26日(金) 川口マーン惠美
川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」


〔PHOTO〕gettyimages
収束の兆しが見えないエボラ熱

アフリカにおけるエボラ熱の流行が、大変な事態になっている。WHO(世界保健機関)のマーガレット・チャン事務局長は12日、新たな感染者の発生が拡大阻止のペースを上回る規模で進んでいるとして、深刻な危機感を表明した。リベリアでは、これ以上の新たな患者を収容するためのベッドがないそうだ。

死者と感染者の数は、ニュースを読むたびに増していく。19日の発表では、死者2600人、感染者5600人を超えた。ただ、本当の数字はこれよりずっと多いことは間違いない。しかも、収束の兆しがまるで見えない。

18日には、国連の安保理事会は緊急の会合を開き、エボラ熱鎮静のための決議案を全会一致で採択した。エボラ熱はこれにより、「国際社会の平和と安全にとっての脅威」と位置付けられた。

ニュースによると、リベリアで援助活動をしている『国境なき医師団』の医者が、動画中継を通じて安保理のメンバーに向かって現地の壊滅的な実情を直接訴えたという。エボラ熱の感染者を救うために命を懸けて戦っている人間の、「今、国際社会が立ち上がらなければ、我々は全滅する」という悲痛なSOSに、安保理の面々は動揺し、決議案は劇的な雰囲気の中での採択となったという。安保理が、伝染病に関する決議の採択をおこなうのは、とても珍しいことだ。

決議案の採択は、米国の主導で実施された。米国は力に任せた独善的な行動が多く、それを変に倫理的に色づけするものだから、しばしば腹が立つが、この国は立派なことも多くしてきた。今回は、エボラ熱が蔓延しているアフリカ諸国に、援助のための軍隊を差し向けるという。

オバマ大統領が8日にNBCに語ったところによれば、隔離施設を設置し、まず国際協力者たちの安全を確保する。彼らの安全が保障されなければ、事は進まないし、現地で援助活動に参加しようという医療関係者も増えない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40548

救援物資、専門家派遣、病院一式・・・ドイツによる支援

現地の混乱は、私たちの想像も及ばないほど悲惨な状態らしい。その中で、まだ病人の世話をし、遺体の埋葬をしている人たちがいることには、頭が下がる。また、外国から救援に駆けつけている人たちに関しては、さらに頭が下がる。

しかし、その努力にもかかわらず伝染病の勢いは弱まらない。シエラレオネでは戒厳令が敷かれ、外出禁止。3万人の志願者が、警察に護衛されながら、150万戸の家々を訪ねて、隠れた病人を探したり、石鹸を配ったり、予防・衛生に関しての啓蒙をしたりしている。

ドイツ政府はすでに8月13日から、医療関係者以外のドイツ人のギネア、リベリア、シエラレオネへの渡航を禁じている。事態はそこまで深刻なのだ。現地で救援活動をしている外国人たちは、孤立無援の感が強いのではないか。

アメリカの派兵は、エボラ熱の危険が自国にも及ぶことを懸念した上での決断だ。今でさえ強力なウイルスが、さらに進化すれば、エボラ熱はアフリカに留まらない可能性は高い。だからこそ、この鎮静を自国民を守る対策の一つと位置付けた。

一方ドイツも、救援物資のほかに、伝染病の専門家を派遣することを検討している。現地の医療関係者に正しい知識を教え、効果的で安全な医療活動をおこなうための人員養成が目的だ。

エボラ熱の流行が始まってから現在までに、ドイツが援助のために用意した金額は240万ユーロだったが、国連の決議案採択の後、急遽1,500万ユーロを上乗せした。この金額を見れば、ドイツがいかに事態を深刻に見ているかがわかる。シュタインマイヤー外相は、他国と協力して十分な援助をすることは、ドイツの責任であると言った。

なお、ドイツが援助として検討していることの1つに、病院一式の輸出がある。現地の病院は劣悪な状態で、ちゃんとした医療がおこなえない。そこで、最新の機能を備えた病院を、丸ごと持ち込もうという計画だ。ドイツ連邦軍や赤十字は、どんなところにでも、あっという間に病院を設置する技術をちゃんと持っている。

あるいは、病院船を港に接岸し、そこを医療活動の拠点の一つとするアイデアも出ている。

いずれにしても、ドイツ人が設置する仮設病院は、現地の病院よりも設備が良く、素早く医療活動に入れるはずだ。伝染病の研究では有名なロバート・コッホ研究所が協力している。まずは、200床以上の病院が計画されている。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40548?page=2

「ドイツ政府は十分な撲滅対策を取っていない」

WHOの発表によれば、8月26日までに、240人の医者や看護師がエボラ熱に感染し、その半数の120人が亡くなった。8月初めには、スペイン人の感染者がマドリッドに運ばれ、治療を受けたが、5日後に死亡。現地で布教と援助をしていた、かなり年配の聖職者だった。

一方、アメリカに運ばれたアメリカ人の感染者は3人いたが、2人はすでに回復している。まだ認可されていない医薬品を実験的に使用し、めきめきと快方に向かったという。3人目には違う薬品を使っており、山は越えたが、まだ回復とまではいっていないらしい。3人とも、援助のために行っていた、比較的若い人たちだ。

WHOはこれから9ヵ月の間に感染者が2万人を超えるだろうという予測を発表した。援助の人たちも、さらに感染の危険が増す。目下のところ、3週間ごとに、感染者の数は倍増しているという。

援助物資の輸送には、スペインとセネガルが基地の役割を果たすようになる。ドイツ軍はフランス軍と共同で、まもなく輸送を始めるはずなので、この文章が出る頃には、救助物資は現地に届き始めているに違いない。輸送には、100名の兵隊と、4機の輸送機が展開される。一回の空輸で8トンの援助物資を運べるそうだ。

とはいえ、すでに現地では、エボラ熱との戦いだけでなく、飢餓、暴動、国家のメルトダウンが起きかけている。ギニア、リベリア、シエラレオネの3ヵ国とも、元々が貧しい国だった。衛生に関する知識も行き渡っていない。これほど感染力と殺人力のある伝染病に見舞われたら最後、自力で救済する力はないどころか、国家が倒れてしまっても不思議はない。

『国境なき医師団』のドイツ支部代表、クリスチャン・ヴェストファールは、「ドイツ政府は、西アフリカのエボラ熱の流行に対して、十分な撲滅対策を取っていない」と非難している。現場の惨状を見ている者は、豊かな国の人々の呑気さに、歯がゆい思いをしているのだろう。

ヨーロッパはアフリカから近いので、エボラ熱の深刻なニュースは毎日のように流れるが、それでも生活環境の差がありすぎて、事態を実感できないというのが現状だ。ヨーロッパよりさらに遠い日本では、当然のことながら、自分たちには関係のない怖い病気でしかない。

「メルケル首相、御存じのようにエボラ熱の勢いはたぐいなきもので、我々の鎮静の試みはまるで及びません。これまでは『国境なき医師団』という民間の組織が援助していましたが、彼らにも限界があります。あなたの政府の直接的な援助なしには、我々はエボラとの戦いに敗北するでしょう」という悲痛な書簡が、リベリアの大統領から届いているという。

資金援助だけでは事態は解決しない。医者が要る。看護師が要る。現地での直接的な支援が要るということは、すでに誰の目にも明らかになっている。現在ドイツでは、援助に向かう志願者を募集しているが、なかなか集まりは良くないようだ。

ただ、現地に行けないのなら、やはり資金援助もないよりはあったほうがずっと良い。とにかく、現地の様子はあまりにも悲惨だ。日本のメディアも、もう少し多くエボラ熱のことを報道すれば、募金が集まるのではないだろうか。私たちは、彼らに比べて、何百倍も恵まれた世界で暮らしている。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40548?page=3



この記事は若干唐突な印象を持つが、結局、ドイツのエボラ対策支援のぬるさを批判するものだろうか。他山の石として日本に警告しているものだろうか。

ドイツは、英仏伊ほどにはアフリカとの接点が無いから無理も無いという気もする。EUの宗主国としての責任はあるだろう。

日本への警告は当然だ。守りに入る状況になったらパニックが起きて装丁したシナリオどおりには事は運ばない。

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