【エボラ出血熱】恐怖で逃げ出す医療者も 流行国リベリアで支援した日本人医師が実態語る
2014.09.01 07:55
写真:"エボラ出血熱の被害が広がるリベリアで医療支援活動に当たった国立国際医療研究センターの加藤康幸医師"
西アフリカで感染が広がるエボラ出血熱。世界保健機関(WHO)は感染者数が最終的に2万人を超える恐れがあると警告した。支援に当たる医療従事者の感染も目立ち、機能停止に陥った病院も多い。流行国リベリアで8月20日まで医療支援を行った国立国際医療研究センターの加藤康幸医師(44)は「患者に最善の治療環境をつくることが重要だ」と各国の支援と冷静な対応を呼びかける。
加藤医師はWHOチームの一員として、5月に続き2度目のリベリア派遣。約20日間にわたり、医療者への感染防止教育などの活動を担った。5月には治まっていた流行は再び拡大していた。「空港で現地の運転手に手を差し出したら、握手を拒否された。感染防止のため、大統領の命令で握手が禁止されたようです」
厳しい労働条件だったところに病気への恐怖が重なり、逃げ出す医療従事者も続出。首都モンロビアの主要病院が閉鎖されるなど、地元の医療は崩壊していた。加藤医師は看護師ら病院の職員に研修を実施した。「研修を受け防護服を確保した上でなら、医療現場に復帰したいと願う職員は多かった」からだ。だが、医療現場に戻っても、現状は十分な医療を提供するにはほど遠い。感染者を収容するため20床を用意したところ60人が押し寄せ、治療が受けられず死亡する患者もいた。また、病気への無理解から治療棟を勝手に出ていく患者もおり、患者数や死者数を毎日記入する台帳には「消えた人数」を記す欄があった。
医療従事者にとっても、現場は過酷だ。加藤医師は「患者に接する以上、リスクはゼロでないと皆が認識していた」と明かす。患者を救いたい思いが強くなり過ぎることにも、警戒が必要だった。親類に感染者がいた看護師が、自身の発熱を隠して治療に当たり、医療従事者への感染を広げてしまった。加藤医師らのチームは毎朝「ヒーローになるな」と過度な自己犠牲を自制するよう確認し合ったという。
現地は医療従事者が圧倒的に足りず、防護服や食糧などの物資も不足気味だ。加藤医師は「病気についての知識を広め、人数をかけて対応することが大事だ」と話し、平常心で当たることの重要性を強調した。(道丸摩耶)</p>
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