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エボラより怖い? まだ見ぬ感染症 中東で広がる「MERS」警戒必要 鳥インフル


http://www.sankei.com/life/news/141116/lif1411160013-n1.html

2014.11.16 06:07更新

エボラより怖い? まだ見ぬ感染症 中東で広がる「MERS」警戒必要 鳥インフル

 西アフリカで流行するエボラ出血熱の死者数が5千人を超えた。致死率が高いウイルスだけに、国内でも空港で滞在国を確認するなどの水際対策強化が進められている。しかし、感染症の脅威は地理的な要因や感染経路によっても変わる。海外で流行し国内にはまだ入っていない感染症はほかにもあり、関係者は警戒を続けている。(道丸摩耶)

 ■糖尿病患者は重症化も

 国立感染症研究所ウイルス第3部の松山州徳(しゅうとく)室長が「日本人にとっては、エボラより危険でしょう」と警戒するのは、中東で広がる感染症、MERS(マーズ、中東呼吸器症候群)だ。

 MERSは、2012年に発見された新型のコロナウイルスによる感染症で、発熱、せき、肺炎などの呼吸器症状を引き起こす。特に糖尿病や心臓病の人では重症化することが分かっている。サウジアラビアを中心に中東やアフリカ、欧州などで患者が報告され、10月末現在で、患者897人のうち325人が死亡(致死率約36%)。今月に入っても感染者は報告され、900人を超えた。

 MERSコロナウイルスはヒトコブラクダから人に感染するとされ、人から人へも感染する。欧州では、中東から帰国後に発症した患者から家族や医療従事者に感染したこともある。感染しても症状を起こさない「不顕性(ふけんせい)感染」となる場合もあり、感染に気づかないうちに他人にうつしてしまう恐れがある。ただ、これまでの調査では、ラクダを介さずに何代も人の間で感染が続いた例は確認されていない。

 中東では昨年、今年といずれも4月に感染者が一気に増えており、来年も春に増える恐れがある。ラクダの出産、成長に合わせてラクダの間で流行が起き、それが現地の祭りなどで一気に広がった可能性があるという。松山室長は「人から人に感染すること、不顕性感染が起きていることなど、リスクは高い」と指摘する。ワクチンや治療薬はなく、糖尿病患者や60歳以上の感染者の多くは死亡していることから、糖尿病患者や高齢者が多い日本に持ち込まれれば、重症化する人が出る恐れがある。

■中国蔓延 地理的リスク

 中国で人への感染が確認され、警戒されているのが鳥インフルエンザ(H7N9型)だ。流行は終息したと思いきや、中国では今月2日、今秋初の感染者が確認された。

 鳥インフルは本来、鳥にしか感染しないインフルエンザだが、H7N9型は13年、人への感染が確認された。東北大大学院の押谷(おしたに)仁教授(微生物学)は「ウイルスが感染しやすい冬に向けて、患者がまた増えていく可能性がある」と予測する。

 押谷教授が恐れるのは患者の増加だけでなく、増加に伴うウイルスの変異だ。現状では鳥から人にうつっても、人から人にうつることはないウイルスが、患者への感染が繰り返される中で人の体に適応するよう変異していく恐れがあるのだ。すでにそうした変異は一部でみられており、通常のインフルのようにくしゃみやせきで容易に人から人へと感染すると、新型インフルエンザとして数千万人の患者が出る恐れがある。

 また、H7N9型が流行するのは日本と行き来が多い中国。当初は上海などで始まった感染だが、現在は広東省など南にも広がった。「このまま中国で感染が続けば、日本に波及するリスクはエボラより高い」と押谷教授は指摘する。

 動物のインフルが人から人に感染するよう変異した例では、日本でも09年に流行した新型インフル(H1N1型)がある。H1やH5というのはウイルスのタンパクの型のことで、ウイルスの「顔」ともいえる。人の体はこの「顔」を見て免疫を発動する。押谷教授は「H1型は『Aソ連型(H1N1型)』などとして人の間で流行してきたウイルスだったが、H7型は人の間で流行したことがない。多くの人が免疫を持っていないので、新型インフルを起こした場合には09年の流行より大きな被害が起きる可能性がある」としている。

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