世界保健機関(WHO)のケイジ・フクダ事務局長補が10月31日、朝日新聞の単独インタビューに応じた。西アフリカで大流行しているエボラ出血熱対策について「封じ込めるにはたくさんの要員が必要。だが、(要員確保が)とても難しい」と現状を述べた。

 フクダ氏はWHOでエボラ対策の指揮を執る最高幹部の1人で、大流行が続く西アフリカなど関係国に頻繁に入っている。現地で必要な人材について「医療従事者だけではなく、(統計など)データを扱う要員、(流行の)監視を補助する要員、輸送を担う人などすべてに及ぶ」と指摘。「(エボラ出血熱の大流行が)より拡大するにつれて要員を確保しにくくなることを当初心配していたが、それが現実になってしまった」と振り返った。

 WHOは31日、エボラ出血熱に ついて、疑い例も含む感染者数が1万3567人、死者数が4951人になったと発表している。フクダ氏は、4月の時点で、封じ込めにかかる期間の目安とし て「4カ月」という数字を挙げていたが、いまも感染の拡大が止まらない状況だ。このことについて、「(状況の)評価は常に変わる。なぜなら、(感染症の大 流行では)多くの予期できないことがあるからだ」と説明した。

 また、今回のエボラ出血熱の 特徴として、感染者数や死者数といった実際の数字以上に、社会・経済に影響を与えている点に言及。「感染症は世界中に『恐怖』を生み出し、国内政治状況も 変えうる」との見方を示した。そして、「恐怖の根本は人々が『本当に知らない』ということだ」とし、「恐怖」を乗り越えるために「人々とコミュニケーショ ンを重ね、情報を提供する。(専門家である)私たちが、同じ質問にも何度でも答えていかなくてはならない」と強調した。
 また、フクダ氏は、今回のような大流行におけるWHOと各国の役割分担について、「WHOは年間数百の(感染症の)大流行を監視しているが、すべ ての大流行を防ぐほど早くは動けない。もっとも早く動いて対処しなくてはならないのは当事国である」とし、「WHOは(当事国に)そのためのガイダンスを 与える」と説明した。(ジュネーブ=松尾一郎、浜田陽太郎)