なぜ米国はエボラ感染を防げなかったのか
http://toyokeizai.net/articles/-/53062
なぜ米国はエボラ感染を防げなかったのか
医療システムは強固ではなかった
アブドル・エル・サイード :コロンビア大学教授
2014年11月15日
10月にニューヨークで医師がエボラに感染。米国内には動揺が広がった(写真:UPI/アフロ)
トーマス・エリック・ダンカン氏が米国にエボラ出血熱を持ち込むまで、この感染症は主に貧しい西アフリカや、そこであえてボランティア活動をする人たちが懸念する外来の感染症だとして、ほとんど関心を持たれなかった。ダンカン氏の看病に当たっていた看護師2人に感染したのは、いくつかの医療プロトコル違反が原因のようだが、これにより米国の対応に厳しい目が向けられている。オバマ大統領は、米国内でのウイルスの発見・隔離・管理を担当する「エボラ担当官」を任命するに至った。
医療・公衆衛生の専門家たちは恐れることはないと市民を安心させていた。米国疾病対策センター(CDC)と他の医療機関は、ダンカン氏と接触したおそれのある人物を慎重に追跡したり、感染症を伝染させる可能性のある物を隔離したりと陰で行動していた。医療システムが強固なため、米国内の感染拡大はほぼありえないと考えられていた。
過去10年間に渡り予算を削減
政府は過去10年間にわたり、CDCや米国立衛生研究所(NIH)を含めた一流医療機関や、州・地方の保健局の予算を削減している。2005~12年にCDCは財源の17%を失った。政府高官は先日、エボラ系の緊急医療に割り当てられた予算は13年より少ない10億ドルと発表した。
州・地方の課題は一層深刻だろう。11年に地方保健局の約23%は公衆衛生準備プログラムの削減または撤廃を発表した。12年には追加の15%の局が同様の削減を発表。14年単独では、病院準備プログラム(地域病院が地方保健局と連携して公衆衛生の緊急事態に備える)は1億ドルの予算を削減されてしまった。
同プログラムは、エボラのような予期しない流行下での感染症の封じ込めを医療従事者に訓練させるため特別に設けられたものだった。十分な予算が付与されていれば、感染した2名の看護師はおそらく今でも元気だっただろう。
エボラのような感染症の理解と治療の重要な進歩に資金を提供しているNIHもまた、予算削減にあえいでいる。13年のように大幅削減された年度を除き、過去10年間の予算はほとんど増えていない。生産的な研究施設は閉鎖され、エボラワクチンのような命を救う研究を後回しにしてしまった。
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なぜ米国はエボラ感染を防げなかったのか
医療システムは強固ではなかった
アブドル・エル・サイード :コロンビア大学教授
2014年11月15日
近年の思い切った予算削減の原因の1つは、公衆衛生機関の運営がほとんど話題に上らず、注目もされずに行われていることだ。これらの機関は感染症を完全に予防することに最善を尽くし、極めて重要な役割を誰の目に触れることもなく行っている。景気のよいときには予算獲得が難しいうえ、財政削減時には最初のターゲットの1つにされてしまう。
われわれは医療インフラに過度に依存すべきではないが、感染症による死が迫っている今、その重要性は明白だ。
まだ安心はできない
米国内での深刻なエボラ流行の脅威は最小限に抑えられているが、だからといって安心はできない。西アフリカの感染者数が増加するにつれ、同国外での潜在的な流行可能性も高まるのだ。
オバマ大統領はリベリアでのエボラ対策を支援するため、8800万ドルの支出と3000人の軍隊の派遣を9月下旬になってやっと約束した。その間に6000人のエボラ患者が確認され、さらに多くの患者が未確認とされている。CDCの資金が適切な水準だったなら、米国は地上部隊の代わりに、高度に訓練された公衆衛生専門家による支援をもっと早く効果的に展開できただろう。
感染症が生じる前に予防することが公衆衛生の指針であり、長期的な投資が不可欠である。エボラの流行により過去10年間の愚かな財政選択が米国人に完全に露呈される可能性は低いだろう。しかし、世界で突如出現した感染症は、もしわれわれが警戒を怠っていたら何が起きるかをはっきりと思い出させる役目を果たしている。次の流行は間近に迫っているかもしれない。われわれは備えを十分にしなければならないのだ。
(週刊東洋経済2014年11月15日号)
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